FIRE退職の手続きロードマップ|健康保険・年金・住民税・失業給付をいつやるか
「資産の目標額には近づいてきた。
でも、実際に会社を辞めるとなると、健康保険や年金や税金の手続きって何をすればいいんだろう」
そう感じている方もいるかもしれません。
会社員でいる間は、社会保険も税金も会社がまとめて処理してくれます。
ところがFIREやセミリタイアで退職すると、健康保険の切り替え、国民年金の種別変更、住民税の納付、場合によっては失業給付の手続きまで、自分でやることになります。
この記事では、すぐに再就職しない前提で、退職の3か月前から退職後1年ごろまでにやることを時系列でまとめました。
各手続きは「概要・期限・判断のポイント」までにとどめ、金額の計算方法や制度の詳しい比較は、当ブログの個別記事へのリンクをたどれるようにしています。
この記事は2026年9月時点の公的情報にもとづいています。
制度や期限は改正されることがあり、筆者は税理士や社会保険労務士でもないため、手続きの際は各公式ページや窓口で最新の内容を確認してください。
FIRE退職でやることの全体像【時系列早見表】

まず、退職の前後でやることの全体像です。
自分が今どの段階にいるかを確認して、必要なところから読んでください。
| 時期 | 主なやること | 期限 | 重要度 |
|---|---|---|---|
| 退職3〜6か月前 | 生活費・国民健康保険料・年金額を試算/現金を厚くする | 目安 | ★★ |
| 退職1〜3か月前 | クレカ・ローン・賃貸・健康診断を在職中に/有給消化の計画/退職の意思表示 | 就業規則による | ★★★ |
| 退職日まで | 退職所得の受給に関する申告書の提出/離職票を依頼/返却物の準備 | 退職日 | ★★ |
| 退職直後 | 保険証などの返却/源泉徴収票・離職票などの受領 | 数日〜10日 | ★★ |
| 退職後14日以内 | 国民年金の種別変更/国民健康保険の加入(任意継続は20日以内) | 14日/20日 | ★★★ |
| 退職後すぐ | 失業給付を受けるならハローワークで求職の申し込み | 早めに | ★★(受給する人のみ) |
| 退職後1〜3か月 | iDeCoの種別変更/企業型DCの移換/納付書の支払い | 種別変更は目安・DCは6か月 | ★★ |
| 翌年2〜3月 | 確定申告(納めすぎた所得税が戻ることがある) | 3月15日 | ★★★ |
| 翌年6月〜 | 住民税・国民健康保険料の納付(前年の所得で計算されるため高い) | 各納期 | ★★★ |
| 退職後1〜2年 | 所得が下がると国保・住民税が軽くなる/任意継続は2年で終了 | — | ★ |
この表は「いつ、何をするか」の地図です。
「いくらかかるか」「どちらが得か」といった金額の話は、それぞれの詳しい記事にまとめています。
退職3〜6か月前にやること

この時期は、退職後の生活が経済的に成り立つかを数字で確認する段階です。
退職後の生活費と社会保険料を試算する
退職すると、会社が半額負担していた健康保険料と厚生年金保険料が、原則として全額自己負担になります。
まずは1年間の生活費と、退職後にかかる国民健康保険料・国民年金保険料のおおよその金額を把握しておきます。
国民健康保険料は前年の所得をもとに計算されるため、退職して所得が下がる前の年は保険料が高くなります。
具体的な金額の目安や計算方法は、

こちらの記事にまとめています。
世帯人数別の生活費のイメージは

こちらの記事を参考にしてください。
ねんきんネットで年金の見込み額を確認する
会社員である期間が短くなるほど、将来受け取る厚生年金は少なくなります。
退職前に「ねんきんネット」やねんきん定期便で、加入記録と見込み額を確認しておきましょう。
生活防衛資金を厚めにしておく
退職直後は、住民税や国民健康保険料の請求がまとまって来ます。
相場が下がっている時期に資産を取り崩さずに済むよう、現金の比率を一時的に高めておくと安心です。
目安は生活防衛資金の正しい準備、取り崩し率の考え方は
FIRE 4%ルールの計算とシミュレーション

を確認してください。
退職の判断材料は「1年間の生活費」と「退職後にかかる社会保険料」の2つです。
退職1〜3か月前にやること(会社員の信用があるうちに)

退職すると、審査のいらない信用として使えていた「会社員」という肩書きが下がります。
必要なものは在職中に済ませておきます。
クレジットカード・ローン・賃貸契約は在職中に
クレジットカードの新規発行、住宅ローンの借り入れ、賃貸物件の契約や更新は、収入が安定している在職中のほうが通りやすい傾向があります。
退職後の賃貸審査への備え方は、FIRE後の賃貸審査に備える5つの対策にまとめています。
そのほか在職中に済ませておくこと
- 健康診断・人間ドックを受けておく(会社の補助は退職するとなくなります)
- 残っている有給休暇の消化計画を立て、早めに上司へ相談する
- 退職の意思を就業規則で定められた時期までに伝える(一般には1〜3か月前)
- 固定費を見直して、退職後に必要な資産を小さくしておく
固定費の下げ方の手順は

を参考にしてください。
クレジットカードとローンは、辞めると決めたらすぐに在職中の申し込みを検討します。
退職日までにやること

退職日が近づいたら、書類まわりの準備を進めます。
- 退職金がある場合は「退職所得の受給に関する申告書」を会社へ提出する
- 離職票を発行してもらうよう会社に依頼する(雇用保険の手続きに使います)
- 返却する物(健康保険証・社員証・貸与品)を確認しておく
- 受け取る物(源泉徴収票・雇用保険被保険者証・年金手帳または基礎年金番号通知書・退職証明書)を確認しておく
「退職所得の受給に関する申告書」を提出しておくと、退職金にかかる所得税が適正に源泉徴収され、原則として確定申告は不要になります。
提出しなかった場合は、退職金の支払金額の20.42%が源泉徴収され、確定申告で精算することになります。
出典:国税庁「退職金を受け取ったとき(退職所得)」(2026年9月確認)
退職直後にやること(返却・受領するもの)
退職の前後で、会社に返す物と受け取る物を整理します。
| 会社に返す物 | 会社から受け取る物 |
|---|---|
| 健康保険証 | 源泉徴収票 |
| 社員証・入館カード | 雇用保険被保険者証 |
| 貸与のパソコン・備品 | 離職票(後日郵送されることが多い) |
| 名刺 | 年金手帳または基礎年金番号通知書 |
| 制服など | 退職証明書(依頼すると発行されます) |
離職票は退職後10日前後で郵送されることが多い書類です。
2週間ほど経っても届かない場合は、会社かハローワークに問い合わせます。
源泉徴収票は確定申告や国民健康保険の手続きで使うため、なくさないように保管します。
退職後14〜20日以内にやる手続き(ここが最重要)
退職後の手続きの中で、期限が短くて重要なのがこの3つです。
健康保険を3つの選択肢から決める
退職後の健康保険は、主に次の3つから選びます。
- 健康保険の任意継続(退職前の健康保険を最長2年間続ける)
- 国民健康保険に加入する(市区町村の窓口)
- 家族の健康保険の扶養に入る(配偶者などが会社員の場合)
任意継続を選ぶ場合、申請期限は退職日の翌日から20日以内です。
郵送で申請するときは、20日以内に必着するように送ります。
加入には、退職日までに継続して2か月以上の被保険者期間が必要です。
任意継続は保険料を全額自己負担しますが、保険料の計算に使う標準報酬月額には上限が定められています(金額は加入する健康保険の公式サイトで確認してください)。
保険料を納付期限までに納めないと、その時点で資格を失う点にも注意が必要です。
2022年からは、本人の申し出でいつでも任意継続をやめられるようになりました。
国民健康保険は、退職日の翌日から14日以内に市区町村の窓口で加入手続きをします。
どちらが安くなるかは前年の所得や家族構成で変わります。
3つの選択肢の費用の比べ方は

で確認してください。
出典:全国健康保険協会「任意継続」(2026年9月確認)
国民年金の種別変更をする(14日以内)
会社員は国民年金の第2号被保険者ですが、退職して再就職しない場合は第1号被保険者に変わります。
退職日の翌日から14日以内に、市区町村の窓口または年金事務所で種別変更の届け出をします。
配偶者を扶養に入れていた場合は、配偶者の種別変更もあわせて必要です。
収入が下がって保険料の支払いが難しいときは、免除や納付猶予の制度もあります。
ただし免除を受けた期間は将来の年金額が減るため、あとから追納するかどうかも含めて判断します。
出典:日本年金機構「会社を退職したときの国民年金の手続き」(2026年9月確認)
失業給付を受けるなら、ハローワークで求職の申し込みをする
失業給付(基本手当)は、「働く意思と能力があり、求職活動をしているのに就職できない」状態の人が対象です。
受給資格は、原則として離職日以前の2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上あることです。
受給する場合は、離職票・本人確認書類・マイナンバー確認書類・本人名義の預金通帳などを持って、住所地のハローワークで求職の申し込みをします。
自己都合退職の場合、求職の申し込み後に7日間の待期期間があり、そのあとに給付制限期間があります。
この給付制限期間は、2025年4月から原則2か月から原則1か月に短縮されました。
ただし、5年間に3回以上の自己都合離職がある場合は3か月です。
離職期間中や離職日前1年以内に、自分で対象の教育訓練を受けた場合は、給付制限が解除される仕組みもあります。
出典:ハローワーク「基本手当について」、厚生労働省「令和6年雇用保険制度改正(令和7年4月1日施行分)について」(いずれも2026年9月確認)
この段階の期限は14日と20日なので、退職前にどの健康保険にするかだけでも決めておきます。
退職後1〜3か月にやること

iDeCoの種別変更をする
iDeCoに加入している場合、会社員(第2号被保険者)から第1号被保険者に変わったら、「加入者被保険者種別変更届」を運営管理機関(利用している金融機関)に提出します。
加入区分によって掛金の上限が変わるため、掛金額の変更が必要になる場合があります。
iDeCoと新NISAの使い分けは、

で解説しています。
出典:iDeCo公式サイト「加入等のお手続き」(2026年9月確認)
企業型確定拠出年金がある場合は移換手続きをする
勤務先で企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入していた場合、退職後に資産を移す手続きが必要です。
退職した月の翌月から数えて6か月以内に手続きをしないと、資産が現金化されて国民年金基金連合会に移される「自動移換」となります。
自動移換されると運用が止まり、一定期間ののちに管理手数料がかかるとされています。
移換先や手続きは、加入していた企業型DCの運営管理機関や国民年金基金連合会で確認します。
届いた納付書を支払う
国民健康保険料と国民年金保険料の納付書が届いたら、期限までに納めます。
口座振替にしておくと払い忘れを防げます。
失業給付を受けている場合は、原則4週間ごとの失業認定日に、求職活動の実績を持ってハローワークへ行きます。
翌年2〜3月にやること(確定申告)
年の途中で退職して再就職せず、年末調整を受けていない場合は、翌年の2月16日から3月15日までに確定申告をします。
会社員時代に給与から源泉徴収された所得税は、1年間働く前提で計算されています。
そのため、年の途中で退職すると所得税を納めすぎている場合があり、確定申告で還付されることがあります。
申告のときは、自分で納めた国民健康保険料・国民年金保険料の社会保険料控除、医療費控除、ふるさと納税の寄附金控除なども忘れずに反映します。
「退職所得の受給に関する申告書」を会社に出していない場合は、退職金の精算もここで行います。
出典:国税庁「中途退職で年末調整を受けていないとき」(2026年9月確認)
翌年6月からが「1年目の山」
退職して所得が下がっても、住民税と国民健康保険料はすぐには下がりません。
どちらも前年の所得をもとに計算されるためです。
退職翌年の6月ごろから、在職中の所得に対する住民税の納付書が届きます。
退職した月によって納め方が変わり、1月1日から4月30日までの退職では、原則として残りの住民税が最後の給与から一括で天引きされます。
6月1日から12月31日までの退職では、一括で天引きするか、自分で納付書で納めるかを選べます。
この「退職翌年の住民税・国民健康保険料」がFIRE後の家計でいちばん重くなる時期なので、前年に現金を用意しておくと乗り切りやすくなります。
住民税の負担が翌年にずれ込む仕組みの詳しい解説は、

にまとめています。
出典:地方税法第321条の5、お住まいの市区町村の個人住民税の案内(2026年9月時点)
FIRE・セミリタイアする人が特に気をつけたいこと
一般的な退職と違い、FIREやセミリタイアでは次の点に注意します。
失業給付は「働く意思」が前提
失業給付は、再就職を目指して求職活動をする人のための制度です。
完全に仕事を辞めて働くつもりがない場合は、受給の対象になりません。
一方、セミリタイアで一定の求職活動をする意思がある場合は、状況によって受給できることもあります。
受給できるかどうかは個人の状況とハローワークの判断によるため、「FIREでも必ずもらえる」と考えるのは避けたほうがよいです。
セミリタイアとFIREの違いは

で整理しています。
傷病手当金は退職後は原則なし
会社員が加入する健康保険には、病気やケガで働けないときの傷病手当金があります。
退職すると、一定の要件を満たす継続給付の場合を除いて、原則として受けられなくなります。
配当や売却益と、扶養・国民健康保険料の関係
配当金や株式の売却益は、確定申告のしかたによって、国民健康保険料や扶養の判定に影響することがあります。
源泉徴収ありの特定口座で申告しない場合と、申告する場合とで扱いが変わるため、事前に確認しておきます。
子どもがいる場合の資金計画は

も参考にしてください。
FIREを目指す会社員として退職前に確認しておきたいこと
筆者は会社員で、子ども2人の4人家族です。
まだFIREも退職もしていないので、退職後の手続きを実際に経験した立場ではありません。
そのうえで、いざ退職を決めたときにあわてないよう、退職後1年間の生活費と国民健康保険料の目安、ねんきんネットで見られる年金の見込み額、会社員の信用が使えるうちに済ませておきたい手続きは、在職中に確認しておくつもりです。
4人家族の場合は、これに加えて子どもの教育費や配偶者の扶養、世帯全体の国民健康保険料も合わせて見ておく必要があると考えています。
よくある質問
FIREしたら失業給付はもらえますか?
働く意思があり求職活動をしている人が対象なので、完全に働くのをやめる場合は受け取れません。
セミリタイアで求職活動をする意思がある場合は、状況とハローワークの判断によります。
健康保険は任意継続と国民健康保険のどちらがよいですか?
前年の所得や家族構成によって変わるため、一概には言えません。
両方の保険料を試算して比べる方法をFIRE後の健康保険はいくら?で解説しています。
退職金は確定申告が必要ですか?
「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出していれば、原則として不要です。
提出していない場合は、確定申告で精算します。
iDeCoは退職したらどうなりますか?
加入は続けられますが、第1号被保険者への種別変更届の提出が必要です。
掛金の上限も変わります。
詳しくは

を確認してください。
まとめ
FIREやセミリタイアの退職手続きは、やることの数は多くても、時期ごとに整理すれば難しくありません。
特に大事なのは、退職後14日以内の国民年金の種別変更と、20日以内の健康保険の任意継続の判断です。
そして、退職翌年の住民税と国民健康保険料が重くなることを、前もって家計に織り込んでおくことです。
まずは、退職後1年間の生活費と社会保険料の試算から始めてみてください。
FIRE全体の進め方はこちらの記事を

達成までのロードマップは

を参考にしてください。
この記事は2026年9月時点の公的情報にもとづいています。
手続きの際は、各公式ページで最新の内容を確認してください。

